現代において、半導体は生活・医療・産業などあらゆる分野に欠かせない資源となっており、「現代の石油」と呼ばれることもあります。
日本半導体産業のパイオニアである牧本(2021)は、半導体は現代の高度情報化社会の根幹を支えるものであり、一国の衰勢は半導体にあると述べています。また、先進諸国の政府が半導体に対する重要性を発信、貿易戦争が起こるなど半導体産業は極めて重要な産業であることがわかります。
そこで今回から全3回に分けて日本の半導体産業について深掘りしていきます。
本記事では、半導体産業の基礎知識として産業の分類と半導体の分類とその規模感を説明します。
半導体の基礎知識
企業の種類
一口に半導体産業といっても材料や加工した製品、製造企業、設計企業など様々な見方があります。
一般的に半導体産業と言えば、ICやメモリといったデバイスを扱うデバイス産業を指します。
本記事でも半導体産業といった場合、半導体デバイス産業を指します。
ただし、デバイスを製作するためには材料、製造装置が必要であり、これらの産業は川上産業と呼ばれます。
そして、デバイスを製品材料として使用して電子機器などを生産する産業は川下産業と呼ばれます。
以上をまとめたものとそれぞれの市場規模(2024年時点)を示すと以下の通りです(SEMI,2025a,2025b;WSTS,2025;JEITA,2025)。
半導体関連企業の分類(括弧内は市場規模2024)
- 川上産業
- 半導体材料産業(675億ドル)、半導体製造装置産業(1,171億ドル)など
- 半導体デバイス産業(6,300億ドル)
- 川下産業
- 電子機器産業(2.75兆ドル)など
デバイス産業の分類
デバイス産業はさらに、ファブレス、ファウンドリ、OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)、IDM(Integrated Device Manufacturer:垂直統合型)に分類されます。
デバイスの製造工程としては、設計、前工程、後工程があり、特に最先端ロジック分野では水平分業によってそれぞれの工程を複数の企業が担うのが現在の主流です。
- 設計・・・ファブレス
- NVDIA、Apple、ブロードコムなど
- 前工程・・・ファウンドリ
- TSMC、UMCなど
- 後工程・・・OSAT
- ASE、amkorなど
そして、これらの全工程を自社グループ内で完結させる企業をIDM(垂直統合型)と呼びます。
ただし、サムスンはIDMでありながらも前工程の受注も行っていて、ファウンドリ企業として世界2位(2021年時点)のシェアを誇っています(経済産業省)。また、インテルもこの動きがあり、「IDM2.0」と称しています。つまり、一概に分類すると語弊が生まれる可能性があるということに注意してください。
半導体世界市場に占める業態別のシェア(2023年度全体6,695億ドル)は、以下の通りです(吉満, 2024)。
- IDM・・・49%
- ファブレス・・・30%
- ファウンドリ・・・15%
- OSAT・・・6%
半導体製品の種類
シリコン、ゲルマニウムといった材料産業が生産する半導体をデバイス産業が加工して「半導体デバイス」を製作します。
この半導体デバイスの種類は幅広くあり、さらに分類の方法も複数あったり、それらが絡みあったり、発言者によって分類が異なったりと非常にややこしいです。
ここでは、経済学的分析において一般に使われる分類の方法を示します。
まず、半導体デバイスの機能に着目した分類としては以下の4つに分類します。
- ロジック半導体
- 演算を行うデバイス。
- メモリ半導体
- データを保存するデバイス。
- パワー半導体
- 特に大きな電流・電圧を処理するデバイス。
- アナログ半導体
- 電気、光、音などを処理するデバイス。
そのほか、半導体デバイスを製品としての構成レベル(回路としての独立性)に着目した分類として以下の3つの分類があります。
- ディスクリート半導体
- 回路において、単体部品として独立して使用されるデバイス。ダイオード、トランジスタなど。
- IC(集積回路)
- チップ内(シリコン基板上)にトランジスタやダイオードなどと同等の機能をもつ半導体素子構造を集積して形成し、回路として完結した機能をもつデバイス。メモリIC、マイコンなど。
- 半導体モジュール
- ICやディスクリート半導体など複数のデバイスを組み合わせたデバイス。インバータ、センサーモジュールなど。(経済統計上ではICに分類されることが多い)
ディスクリート半導体とICにおける半導体素子の違いは、プリント基板上にトランジスタなどをはんだ付けした電気回路と、シリコン基板上にトランジスタ構造を形成するICの違いを想像すればわかりやすいです。
電気回路は単体部品としてのトランジスタを物理的に組み合わせて回路を構成しますが、ICはトランジスタ構造を基板上に形成します。このように、ICにおけるダイオードはディスクリート半導体を物理的に組み合わせたものではありません。そして、電気回路で使用されるダイオードはそれ単体として製品化されているものなのでディスクリート(個別)と呼ばれるわけです。
基本的には、ロジック・メモリ半導体はほぼICで、アナログ半導体はICが主流、パワー半導体はディスクリートが主流です。
CPUやGPUといった製品は上述した分類でいえば、ロジック半導体のICということになります。
IC市場に関する統計では
先に見た4つの分類(ロジック、メモリ、パワー、アナログ)は、半導体産業全体としてみる上では有用ですが、ICを主軸としてみたい場合は、以下のように分類するのが便利です。

(出所)市場規模の数値:WSTS, 2025『PRESS-Global Semiconductor Market Approaches $1T in 2026』
(注1)市場規模は、各デバイスの2025年の売上高(見通しの値)を示す。
この分類は、WSTS(世界半導体市場統計)で用いられている分類で、ICをロジック、メモリ、マイクロ、アナログの4つに分類する方法となっています。なお、ディスクリートはパワー半導体が中心です。
2025年見通しでは、ICが半導体全体の87%を占めており、特にロジック、メモリが大きなシェアを占めていることがわかります(図2)。
このため、これら分野における競争力の多寡が各企業の半導体市場シェアを大きく左右する構造となっています。

(注1)市場規模は、各デバイスの2025年の売上高(見通しの値)を用いて算出。
また、ICはその集積度によって以下の分類もあります。
- SSI(100素子以下)
- MSI(100〜1000素子)
- LSI(1000〜100万素子)
- VLSI(100万〜1000万素子)
- ULSI(1000万素子以上)
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参考文献
経済産業省, 2023『半導体・デジタル産業戦略』https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital/semiconductors_and_digital.pdf(参照:2026.1.12)
牧本次生, 2021『日本半導体復権への道』ちくま新書.
吉満大輔(編), 2024『半導体工場ハンドブック2025』産業タイムズ社.
JEITA, 2025『2025年度後半以降の半導体市況見通し』https://home.jeita.or.jp/terminal/news/2025/file/0718/seminar_minamikawa.pdf(参照:2026.1.13)
SEMI, 2025a『半導体材料市場統計レポート(MMDS)』https://www.semi.org/jp/news-resources/press/20250430(参照:2026.1.13)
SEMI, 2025b『世界半導体製造装置市場統計レポート(WWSEMS)』https://www.semi.org/jp/news-resources/press/20250411(参照:2026.1.13)
WSTS, 2025『36 Years WSTS Blue Book Data』https://www.wsts.org/67/Historical-Billings-Report?referrer=grok.com(参照:2026.1.13)