日本の半導体産業を深掘していこうシリーズ2回目の今回は、日本の半導体産業の現状を統計データや他国との比較によって確認します。
前回記事では、半導体産業を分析するうえで必要な基礎知識を解説しました。
今回はその基礎知識を前提として日本の現状を説明します。
現代において、半導体は生活・医療・産業などあらゆる分野に欠かせない資源となっており、「現代の石油」と呼ばれることもあります。日本半導体産業のパイオニアである牧本(2021)は、半導体は現代の高度情報化社会の根幹を支えるものであり、一[…]
日本の半導体産業の現状(2025年時点)
半導体産業の世界シェア(業態別売上合計)を見ると、日本は7%のシェアと米国47%、台湾19%、韓国12%と比べ低水準になっています(表1)。しかも、2015〜23年の年平均成長率を見ても米国や台湾を下回っており、半導体産業において遅れをとっていることがわかります。

(出所)吉満大輔(編), 2024『半導体工場ハンドブック2025』産業タイムズ社
(注1)市場全体は業態別売上高の合算であり、ファウンドリ、OSATを含む点に留意。
結論からいえば、この原因として以下のことが挙げられます。
- 大きな市場シェアを占める分野の競争力が弱い。
- 米国、韓国、台湾は特定の分野で市場を独占している。
- ファブレス・ファウンドリ方式への対応の遅れ。
ここで、デバイス産業の上位10社(ファウンドリを除く)を見ると(表2)、上位10社が市場の66%ほど占めており、産業構造の集中が窺えます。ところが、その中に日本企業は1社も含まれていません。そして韓国と米国により寡占状態であることがわかります。
業態を見ると、ファブレス(水平分業)とIDMの比率は半々となっており、メモリ企業はIDM、ロジックはファブレスが中心であることがわかります(表2)。特にここにあるロジック分野の企業は先端ロジックを扱っており、ファウンドリ最大手のTSMCの2025年売上高の87%がスマホ・HPC用途(先端ロジックが大部分を占める)であることを考慮すれば、この分野の収益性の高さが窺えます(データ出所:TSMC, 2026)。

(出所)Gartner, 2025a『Press Release』、主な半導体・業態は筆者により加筆。
(注1)売上高は半導体関連部門のみを計上。
なお、半導体市場全体におけるIDMとファブレスの比率は、IDMが61.3%、ファブレスが38.7%となっています(2023年データ:QYResearch, 2025)。
日本企業が世界の半導体売上高ランキング上位に入らない背景としては、先端ロジックやメモリといった巨大市場への競争力が低く、アナログやパワー半導体など比較的市場規模の小さい分野に強みが分散していることがあります。
日本企業が上位に入らない理由
半導体市場における売上の9割程度を占めるのがICです(前回記事参照)。
そのICの7割程度を占めるのがメモリとロジックです。つまり、ここが半導体のドル箱ともいえます。メモリおよびロジックは、単価・出荷量ともに大きく、かつ市場成長率も高いため、これら分野で競争力を持つか否かが半導体企業の売上規模を決定づける構造となっています。ここで、各半導体の主要企業を確認すると以下の通りです(表3)。

(出所)経済産業省, 2025『半導体・デジタル産業戦略の今後の方向性』
(注1)ここでは経済産業省の分類方法で示しているが、WSTSの分類では、ここでのプロセッサはロジックとマイクロ(大まかにはIntelがマイクロ、AMDはロジックとマイクロ)、マイコンはマイクロに分類される。
日本の強みとしては、パワー半導体において複数の企業がシェアを獲得している点、イメージセンサでSonyが49.5%ものシェアを獲得している点が挙げられます。
メモリは韓国・米国が寡占状態となっています(NANDメモリについてはキクオシア(日本)が14.9%のシェアで第3位)。
ロジック半導体分野において、日本企業はマイコンではルネサスが一定の地位を占めているものの、特に高い収益性を持つ先端ロジック分野では競争力を有していない。先端ロジックでは、GPUやAIアクセラレータに代表されるように、ファブレス・ファウンドリ方式が主流となっています。
湯之上(2023)によれば、7nm以下の先端半導体ではTSMCが世界シェアの90%以上を占めており、事実上の独占状態にある。同氏はまた、先端半導体の生産・開発には長期にわたる技術蓄積と巨額の投資が必要であり、一朝一夕に競争力を獲得できるものではないと指摘しています。このため、半導体製造における事実上の産業基盤としての地位を確立したTSMCの優位性は極めて強固なものとなっています。
実際、ファウンドリ市場全体においても、TSMCは約67.1%のシェアを占め、第2位のサムスン電子(約8.1%)を大きく引き離しており(表4)、先端分野に限らず受託製造市場全体でも圧倒的な支配力を有していることが確認できます。

(出所)Trend Force, 2025b『Press Center』 (注1)サムスンは、ファウンドリの売上高のみ計上。
日本では、先端ロジック分野でのファウンドリ機能を担う存在としてラピダスが政府の支援のもとに設立され、2nm世代の先端プロセス開発が進められています。しかし、執筆時点(2026年1月)では試作の段階であり、量産の見通しは立っていません。
以上を踏まえると、日本はイメージセンサやパワー半導体といった特定分野では国際的な競争力を有しているものの、半導体産業において高い収益性を持つメモリ分野や先端ロジック分野では競争力が低下している。このことが、日本の半導体企業が売上高上位に名を連ねていない主要な要因の一つとなっています。
また、近年の半導体産業では、ファブレス企業とファウンドリ企業がそれぞれ高い競争力を発揮する分業構造が確立しているが、日本にはこれら両分野において世界的な競争力を持つ企業が存在しない。この点が、日本の半導体産業の世界シェアが約7%という低水準にとどまっている大きな要因だといえます。実際、2015〜23年の年平均成長率をみると、水平分業の各社の伸びが相対的に高く、この分野での競争力確保が求められます(表5)。

(出所)吉満大輔(編), 2024『半導体工場ハンドブック2025』産業タイムズ社
(注1)業態別売上高に基づく構成比であり、ファブレス売上には製造・後工程委託分(ファウンドリ・OSAT)が含まれる点に留意。
日本の川上・川下産業の現状
川下産業の現状

(出所)Gartner, 2023『プレスリリース』
世界の半導体購入企業上位10社を見ると、半導体のビッグ・ユーザーはスマホ・パソコンといったハイテク機器を手がける企業であることがわかります。
そして、日本企業はソニーの1社のみとなっており、この分野において日本は競争力が弱いことがわかります。こうした日本の川下産業の不振がデバイス産業の不振に結びついている可能性が指摘できます。
川上産業の現状
ここまで日本の半導体産業(デバイス産業)は世界に遅れをとっていることを確認してきました。
ただし、川上産業(半導体製造装置・材料産業)において日本は世界屈指の競争力を有しています。
湯之上(2023)によれば、製造装置の半分弱が日本製であり、製造装置の部品レベルでは6〜8割、半導体材料の7〜8割が日本製であり、この分野が日本の強みであるとしています。
ただし、製造装置について日本は市場規模の小さい装置群で高いシェアを獲得しているものの、規模の大きい露光装置、薄膜形成、エッチングでシェア取れておらず、全体としてのシェアでは日本は世界2位の28%であり、1位である米国の37%に遅れをとっています。特に近年では前工程で使用される装置群でのシェア低下が顕著です(データ出所:経済産業省, 2025)。
一方、材料市場は近年においても引き続き高いシェアを維持しており、製造装置のシェア低下が危ぶまれるものの、川上産業は依然として日本は高い競争力を維持しています。
日本半導体産業のまとめ
日本の半導体産業は、全体として国際競争において後れを取っているのが現状です。
その主な要因として、市場規模の大きいメモリおよびロジック分野において十分なシェアを獲得できていない点、ならびにファブレス・ファウンドリ方式への対応が遅れた点が挙げられます。加えて、半導体需要を支える川下産業の弱体化も、日本の半導体産業全体の競争力低下に大きく影響していると指摘できます。
一方で、日本の半導体産業には依然として一定の強みが存在します。具体的には、NANDメモリやパワー半導体において一定の市場シェアを維持している点、イメージセンサにおいてSonyが約50%の世界シェアを占めている点、そして半導体材料産業において世界トップクラスの競争力を有している点が挙げられます。
しかし、かつて強みとされてきた半導体製造装置産業においても、近年は特に市場規模の大きい装置分野でシェア低下が見られ、この点は危惧すべき状況です。デバイス産業の強化については、ラピダスに代表されるように政府主導の支援が進められていますが、現状において国際競争力を有する材料産業や装置産業といった分野への継続的な支援も同様に重要であるといえます。
また、今後は自動運転車やロボットといったAI技術が活用される新たなビッグマーケットを見据え、デバイス産業ならびに川下産業を含めた産業全体の競争力強化が、日本の半導体産業にとって重要な課題といえます。
参考文献
牧本次生, 2021『日本半導体復権への道』ちくま新書.
湯之上隆, 2023『半導体有事』文春新書.
吉満大輔(編), 2024『半導体工場ハンドブック2025』産業タイムズ社.
経済産業省, 2023『半導体・デジタル産業戦略』https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital/semiconductors_and_digital.pdf(参照:2026.1.12)
経済産業省, 2025『半導体・デジタル産業戦略の今後の方向性』https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital/0014/handeji14-4.pdf(参照:2026.1.24)
Gartner, 2025a『Press Release-Gartner Says Worldwide Semiconductor Revenue Grew 21% in 2024』https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2025-04-10-gartner-says-worldwide-semiconductor-revenue-grew-21-percent-in-2024(参照:2026.2.8)
Gartner, 2025b『Press Release-Gartner Says Worldwide Semiconductor Revenue Grew 21% in 2024』https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2025-04-10-gartner-says-worldwide-semiconductor-revenue-grew-21-percent-in-2024(参照:2026.2.8)
Gartner, 2023『プレスリリース-Gartner、2022年の電子機器メーカー上位10社による半導体消費は7.6%減少したと発表』https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20230206(参照:2026.1.19)
JEITA, 2025『2025年度後半以降の半導体市況見通し』https://home.jeita.or.jp/terminal/news/2025/file/0718/seminar_minamikawa.pdf(参照:2026.1.13)
SEMI, 2025a『半導体材料市場統計レポート(MMDS)』https://www.semi.org/jp/news-resources/press/20250430(参照:2026.1.13)
SEMI, 2025b『世界半導体製造装置市場統計レポート(WWSEMS)』https://www.semi.org/jp/news-resources/press/20250411(参照:2026.1.13)
WSTS, 2025『36 Years WSTS Blue Book Data』https://www.wsts.org/67/Historical-Billings-Report?referrer=grok.com(参照:2026.1.13)
Trend Force, 2025『Press Center–Consumer Electronics and AI Product Launches Lift 3Q25 Top-10 Foundry Revenue by 8.1%, Says TrendForce』https://www.trendforce.com/presscenter/news/20251212-12834.html(参照:2026.1.24)
TSMC, 2026『2025 Fourth Quarter Earnings Conference』https://investor.tsmc.com/japanese/quarterly-results/2025/q4(参照:2026.1.24)
QYResearch, 2025『Global Semiconductor Market Insights, Forecast 2024-2030』https://www.dri.co.jp/auto/report/qyr/250117-global-semiconductor-market-insights.html?utm_source=chatgpt.com(参照:2026.1.22)